英語学習の基本的な考え方

基本の考え方

日本人が英語に対して苦手意識をもっている理由には色々あるでしょうが、

(1)楽しい学習を知らない。だから英語との接触時間が短い。
(2)学習方法のバリエーションが少ない。だからすぐ飽きる。
(3)英語を使うイメージがわかない。だから学習目的を見失ってしまう。

の3点が大きいと思います。さらに、その背景には「英語は誰かに教えてもらうもの」という固定観念があるのかも知れません。 英語は「自ら学ぶもの」であって、必ずしも教わらなくても修得可能です。学習資源(テレビ、ラジオ、ビデオ、インターネット、本など)が足りなかった時代には、先生から教えてもらう以外に方法はなかったのかも知れません。しかし、今や英語の学習に役立つ材料は、ふんだんに存在します。

そして、幼児の頃には、母国語を学ぶことが難行苦行ではなく、むしろ世界を知る喜びの体験であったように、英語を自分に合った方法で楽しく学習することができるのです。

従って、英語学習の基本的な考え方として、私は次の3点を提案したいと思います。

(1)英語学習について、いろいろなやり方を試してみて、自分に合った楽しく学習できる方法を何通りか発見する。
(2)毎日、英語と接触する時間をもち、空白の日を作らない。
(3)自分自身が英語を使う場面とニーズを想定して、その目的を意識した学習計画をたてる。

いろいろ試そう

まず、「いろいろ試してみる」ことです。映画の好きな人は、自分の好きな映画を何回も見るのなら、苦痛にはならないはず。最近は、シナリオが出版されている映画も多いですし、DVDならば、英語と日本語の音声、英語と日本語の字幕がついているものもありますから、最高の学習材料となります。英語の音声を聞きながら、英語の字幕を見ると、「へえー、こんなセリフをしゃべってたんだ」といった発見の連続になること請け合いです。

音楽の好きな人にとっては、カラオケも素晴らしい材料ですね。私自身は、ビリージョエルやビートルズ、フランク・シナトラあたりが、レパートリーです。(ちょっと古いかなあ。)英語の強弱とリズム感が自然に身につくので、歌える曲を5曲、できれば10曲くらいつくっておくといいと思います。その際、発音がクリアなアーティストを選ぶこと。一般に、ラップやヘビメタは難しいでしょう。女性なら、ホイットニー・ヒューストン、セリーヌ・ディオン、シーナ・イーストンあたりはおすすめです。歌いあげるタイプの曲を選べば、腹式呼吸の習慣もついて、いいことづくめです。

旅行の好きな人は、英語のガイドブックと日本語のガイドブックを読み比べるのも一法。ファッションに興味のある人には、CNNや女性チャンネルのファッション番組は、おすすめです。デザイナーが、コレクションについて話すことは、素材や色、季節感など想像がつきやすいし、フランス人やイタリア人の英語は、ネイティブよりもわかりやすいのです。英語で、料理やガーデニング、占いの本を読むのもいいですね。野球やゴルフなどスポーツ中継も、テレビを二カ国語に切り換えて観てみましょう。

私は、出張が多いので、車中での移動時間はテープを聞いていることが多いです。聞くのは、Books on Tapes と言われるビジネス書の要約をテープに吹き込んだものが中心です。揺れる電車内で本1冊まるまる読むのは大変ですが、要約であれば約60分で、ベストセラー書の内容がわかるので、非常に効率的です。ビジネス関係の話題の本であれば、Amazon.com などで簡単にカセットテープを入手できます。

ゲーム類が好きな人は、英語版に挑戦するのも良いでしょう。私自身は、シミュレーション系が好きで、SimCity に始まり、Civilization、 Master of Orion、などに、ずいぶんはまったものです。もちろん、インターネットは英語学習資源の宝庫ですね。自分が興味の持てるサイトを探してみて下さい。

うまくいかなかったら次へ

また、たとえば、1冊の本を用いても、(a)ただ黙読する、(b)頭にイメージを描きながら読む、(c)和訳しながら読む、(d)音読する、(e)動きながら読む、(f)ノートに書き写す、(g)音読しながらノートに書き写す、(h)速読して大意をつかむ、・・・など、さまざまな活用法が可能です。(f、g は千田先生に紹介していただいた方法です。)文法項目を意識しながら辞書をひいて読む、というのは、あえて書きませんでした。この方法を中学・高校時代にくりかえして、あまり楽しい思いでのある人は少ないからです。

大切なことは、無理なく楽しめる方法が見つかるまで、探しつづけること。1つの方法がうまくいかないなあと感じたときは、次の方法を探し始めましょう。世の中には必ず自分に向いた方法があります。

一般にあまりおすすめできない方法の代表として、Time や Nesweek の定期講読があります。大幅割引きに誘われ、一念発起はりきって1年契約したものの、読み切れない号があっという間に山積み状態となり、罪悪感は募るばかり。英語そのものに対して消極的な気持ちになる人が、毎年、後を絶ちません。両誌とも内容の濃い素晴らしい雑誌ですから、興味のある記事の載っている時に買い、短い記事を1つでも読めば、自分をほめてあげる気持ちでちょうどいい感じです。

また、英英辞典で知らない単語をひくのも、挫折の王道です。英英辞典を持つのは良いことですが、これはひまな時に自分の知っている言葉をひいて、「へえー、英語ではこう定義するのか」と感心するための道具です。たとえば、control の定義は「to have power over」だったりします。なかなか、こうは説明できませんよね。

クロスワードパズルも、難しすぎる場合があります。むしろ、文字タイルを並べて単語を作る Scrabble や、知っている単語を絵を描いてあてっこする Pictionaryというボードゲームの方が楽しめるでしょう。

質より量が大切

「どうやって英語の勉強をしたらいいですか?」
「今はどういう方法で学習しているんですか?」
「今は、特に何もやっていないのですが・・・。」
「では、何でもいいですからやってみて下さい。それから相談にのりましょう。」

私の所には、たくさんの人が相談に訪れます。冷たいようですが、だいたいこんなやりとりになってしまいます。その人にとって、最善の学習方法は、いろいろ試した後で、結果的にわかるもの。事前にベストの方法はわかりません。また、Aさんに適した方法が、Bさんに向いているとは限らないのです。

TOEICは、英語との接触時間3時間につき、1点上がると言われています。ですから、スタートラインが200点台だったとしても、2000時間英語学習すれば900点台に近づきます。中学校・高校では、週3?5時間「英語の授業」があったはずですが、教室内ではほとんど日本語が飛び交っていたはずで、英語との正味の接触時間は大幅に短いのです。特に、現在30歳台以上の方は、リスニングの累積時間が絶対的に足りません。

これまでの英語教育の欠陥を指摘しても始まらないので、ここからどうするかが問題です。英語に対するニーズは、あらゆる分野で確実に高くなっています。結論は Just do it! やるっきゃない、ということです。そして楽しくやる方法を見つけることです。

1日1時間欠かさずに英語と接すれば年間360時間、5年で1800時間。どんな方法であっても、これだけコンスタントに続ければ、ネイティブのようにはなれないかも知れませんが、外国人として十分な英語運用能力がつくはずです。「最善の方法が見つかるまで何も始めない」という「先延ばし症候群」を一刻も早く抜け出すことが大切です。

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